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1997年8月15日(金) ![]() ![]() ![]() | 『日経PBムック』設計者のための『木造住宅コストダウン術』 私のコストダウンテクニック いわゆる元請けを通さず、専門工事会社と施主が直接契約を交わす。設計事務所が施主の代行で、契約先の選定や工程管理を取り仕切る。見積合わせによって工種ごとに2〜3社を競わせて、ギリギリの金額を引き出す。それによって専門工事会社の実勢価格を知ることができる。現場では、通常の監理業務の延長という感覚で取り組めばよい。コストダウン効果を上げるには、現場での変更をなくすことだ。 契約に「発注代行」「工程管理」を明記 私のコストダウンテクニックは、きわめて単純明快である。ゼネコンや工務店を通さないで建物を建てる。仮設足場、基礎工事、屋根工事……というように、それぞれ業種ごとに見積もり、競争に勝ち残ったところに発注する。つまり、建築主が専門工事会社に、直接分離発注して建物を建てる。 そのために必要な知識や技術を、私たち設計者がマネジメントする。この手法は、けっこう大きなコストダウン効果をもたらす。ただし多くの設計事務所にとって、未経験の領域に踏み込むので、少し苦労が伴う。 私の事務所は、1992年からこの手法に取り組んできた。試行錯誤を繰り返しながら体験的に手法を築いてきた。今までに携わった建物は、木造住宅を中心に約50件になる。この手法を、私の事務所はオープンシステムと名付けた。 これから取り組んでみようという設計者が、なるべく余計な苦労や失敗をしないように、実際に建てた木造住宅を例に振り返ってみようと思う。オープンシステムによるコストダウン効果がわかりやすいように、納まりや工程管理で特に工夫のない、ごく一般的な木造住宅を例に挙げた。 94年12月、O氏が来社。オープンシステムについて詳しい説明を聞きたいと言う。私の事務所のことは、自宅と共同住宅を建てた知人から聞いて、興味を持った。また、設計事務所とじっくりプランを締るほうが良い家が出来るのだろうが、費用が高くつくだろうと思い迷っていた、という話だった。 建設業界の仕組み、いわゆる多重下請け構造の中で、いかに無駄な費用が出費されているかを説明し、私の事務所が取り組んでいることや、考え方に対して理解を求めた。 95年1月、O氏と建築士業務委託契約を交わす。オープンシステムによる10件目の建物である。契約書の中には工事発注代行業務、工程管理業務、工事費予定価格が盛り込まれている。業務報酬料は280万円。最近は、この程度の建物で350万円くらい必要であることがわかってきた。 発注権限を持てば突っ込んだ金額も 95年2月、基本設計が完了。模型を作って、基本設計の内容を再検討する。模型の縮尺は50分の1。間仕切りや建具がはめてあり、屋根を外すと内部を見ることができる。外観のイメージ、動線、風の通り道、光の入り具合などを、O氏の家族と共に検討する。 図面ではよくわからなくて、模型で初めて気付くこともあるらしく、この段階で結構いろんな意見が飛び出す。手間はかかるが、決して無駄ではない。現場での変更による手戻りを考えると十分、元はとれている。 95年3月、実施設計。設計者自身が、見積、専門工事会社の選定、工程管理をすることが前提なので、実施設計はあくまでも実用的な図面で、計25校になった。30〜40社の専門工事会社が見積に参加してくるので、同じ条件で見積ができなければならない。また、現場で施工図を描かせて検討、などという考えはない。 95年4月、見積開始。仮設工事、基礎工事、屋根工事……と各業種ごとに、専門工事会社2〜3社に声をかけ、見積に参加してもらう。原則として、最も低い金額を提示した会社と内容を再検討し、採用する。 実勢単価の把握、これが設計事務所にとって、いちばん自信がない分野かもしれない。建築主の委託を受けて、設計事務所が業者を選定し、工事を発注する権限を持たないと、専門工事会社は決して突っ込んだ金額を提示してこない。
サブコンが本気で勝負してきた時の額 各項目の工事費は概要シートの通りであるが、実際に知りたいのはそれぞれの実勢金額の明細であろう。見積結果の一部分を示した。地域においていくらかの差があるとは思うが、参考になるかもしれない。 @仮設足場 218u(延べ面積)×1000円/u=21万8000円。ピケ足場のレンタル料である。階段足場、運賃、それに架け払い料を含んでいる。本来なら架設面積に対して金額を出すべきであろうが、この会社は延べ面積から金額をはじいている。過去のデータから割り出したというが、たしかに見積は楽である。 A基礎工事 根切り、埋め戻し、砕石転圧、鉄筋、型枠、生コン、アンカーボルト、束石、天端モルタル、レッカーまで含んだ合計金額を、布基礎の延べ長さで割ると、1 万円/m。ただし、最近は8500円くらいでできることがわかってきた。土間コンは1u当たり3500円が目安。 B大工手間・木材 この工事が最も金額が把握しにくいし、かなり大維把な見積の仕方がまかり通っている。また金額が大きいので、全体のコストに最も影響する。大工手間は坪当たり7万円前後。正確な歩掛かりデータの把握と工程管理の工夫により、大きなコストダウンの可能性がある。現在,私の事務所が最も力を入れて研究している分野である。 C屋根工事 ルーフィング、平瓦 (石州一文字瓦)、役物瓦、捨て水切りまでを屋根の実面積で割ると、坪当たり1万7600円。 見積結果の一部を示したが、実勢金額は市販の積算資料や設計見積では決して把握できない。専門工事会社が自由な競争の下で、本気で勝負をしてくる状況でのデータが必要である。全国各地からこのようなデータがある程度集まれば、毎回、専門工事会社から見積もる必要はなく、設計者が金額を査定する、ということが可能になる。 ●見積単価(抜粋) [仮設工事] 〈KMK山陰〉 ・ピケ足場(工事付きレンタル、昇降設備・階段・運賃を含む)1000円/u ・飛散防止ネット(メッシュシート)1800円/面 〈A社〉 ・水盛遣方 200円/u ・墨出し100円/u ・養生 400円/u [基礎工事] 〈B社〉 ・根切り1200円/m3 ・埋め戻し整地(場内処理)1500円/m3 ・砕石転圧 7000円/m3 ・鉄筋工(DlO)160円/kg ・ペース枠 300円/m ・ベースコンクリート(Fc180kg/m3、打設共)1万9500円/m3 ・布基礎枠組み 3100円/u ・布基礎コンクリート(Fc180kg/m3、打設共)1万9500円/m3 ・アンカーボルト取り付け 200円/本 ・束石 600円/個 ・天端モルタル 500円/m ・レッカー 2万5000円/固 ・土間工事(盛り土、砕石、型枠、コンクリートならし共) 3500円/u [本工事] 〈エーアール建築事務所〉 ・大工手間(出窓などを除く) 7万5000円/坪 ・上棟メンヨウ1万8000円/人・日 ・レッカー 6万円/日 ・くぎ、金物、ボンド類(住宅金融公庫仕様)1000円/u [左官工事] 〈三上業務店〉 ・外壁ラス張り、力骨打ち 800円/u ・外壁モルタル目地切り仕上げ 3800円/u ・布基礎モルタル仕上げ 2500円/u ・犬走り、テラス床面モルタル3000円/u ・豆砂利洗い出し 9800円/u ・内部壁石こうプラスター中塗り 2500円/u ・内部壁じゆらく土塗り 2300円/u ・浴室タイル下地 2000円/u ・玄関幅木、床面タイル(150mm角)貼り 1万3800円/u ・浴室壁タイル(100mm角)貼り 1万1000円/u ・床下換気口(取り付け共〉1800円/個 [瓦工事] 〈ミヨシ産業〉 ・瓦(石州一文字)120円/枚(平直し) ・瓦施工 4500円/坪 ・ルーフィング 800円/坪 ・捨て水切り板1000円/本 ・残材処理費 250円/坪 〈C社〉 ・瓦110円/枚 [板金・といエ事] 〈伊塚板金工業〉 ・取り合い水切り(カラー鉄板)1200円/m ・軒どい(半丸105φ)1100円/m ・竪どい(6φ)1100円/m ・じょうご1500円/個 ・エルボ 400円/個 [クロスエ事] 〈ミキ装飾〉 ・クロス工事(天井・壁、柄合わせのロスを除く〉 900円/m ・クッションフロア工事1800円/u ・ソフト幅木工事 450円/枚 ・畳 8000円/畳 施主が告専門工事会社と契約 95年5月、O氏と各専門工事会社が、工事請負契約を交わす。価格交渉、VE提案を経て決定した各専門工事会社の金額、支払い日、振り込み先の一覧と工事工程表を作成して、O氏の承認を受け、各専門工事会社ごとに工事請負契約書を作成。契約した専門工事会社の数は13社だった。 ほとんどの会社が、この日初めてO氏と顔を会わせた。したがって「塗装工事の○○です。この度はよろしくお願いします。」というようなあいさつが1社ずつ交わされた。普通、建築主と専門工事会社がコミュニケーションをとるという機会はあまりない。 なお、あらかじめ見積もることが難しい項目、例えば現場で発生するゴミの処理費用、仮設光熱費などは推定金額を予備費として計上し、後に実費清算した。工事期間中の保険は、建築主と損保が契約。普段は下請けである専門工事会社が、この時はすべてが元請けになるので、労災保険は各々の会社が加入した。 現場段階の設計変更はほとんどなし 95年5月、工事着工。設計者が工事工程表にのっとって、各専門工事会社と連携をとりながら、工事の工程を管理する。とは言っても、一日中現場に張り付いているわけではない。日常の設計監理業務の延長で考えられる範囲、と思ってよい。打ち合わせの相手が工務店の現場監督か、専門工事会社の職人かの違いはあるが。計画、設計段階で、建築主とかなり密に打ち合わせ、検討をしてきたので、現場での変更はほとんどなかった。 95年11月、工事完成。建築士業務委託契約を交わしてから約300日)担当の設計者は、設計中や監理中の物件を、常時3〜4件抱えている。この住宅の設計監理、見積査定、業者選定、工程管理などに要した建築士の業務人日数は、延べ120人くらい。結果から逆算すると、業務報酬料は決して高くはない。しかし、私の事務所にとって、建築主から必要とされている、という確かな実感が持て、さらに、新しい分野を切り開いていくことができる、という可能性まで与えられた。 ●建物概要 所在地 鳥取県米子市 地域・地区 市街化調整区域 建ペい率70% 容積奉360% 設計者 山中設計 施工期間 1995年6月〜11月 敷地面積 669u 建築面積 163u 延べ面積 219u 構造・階数 木造、地上2階 設計料 280万円 総工費 2843万円 | オープンシステムの雑誌 (その他の体験ブログ) ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||