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建築の - オープンシステムの雑誌

2004年4月1日(木)

建築知識建築知識

平面図平面図

詳細図詳細図

工事金額工事金額


建築知識


めざせCMの達人 住宅コスト大公開
文=瀬 戸 高 志 (瀬戸設計)

J 古民家改修を分離発注した実例


築50年以上経った古民家を現代生活に合わせて再生した事例が全国各地で報告されている。今回はそうした「古民家」を分離発注方式のよって改修した事例を紹介する。

■トップライトを増築し光を入れる

 本事例は石川県加賀市にある昭和20年ごろに建てられた古民家を改修したものである(写真1.2、 046頁図1)。
新築当時には既存建築物はそもそも1つの空間を4つに仕切った田の字型の間取りだった。そのため、各部屋のプライバシーを考えて廊下を設けたうえで、和室の間仕切りを一部撤去して、1つの洋室へとリフォームした。

 さらに、施主は狭い既存の玄関に不満をもっていたため、既存の玄関と土間を一体化してL字型のものとし、オエ(囲炉裏のあるリビング)部分に隣接させ、その土間は洋室までつながるようにした(047頁写真3)。また、屋根部分にはサッシを入れた煙出し(トップライト)を増築し、暗かった居室に光を採り入れた。

■保存状態の良い既存躯体は残す

 今回の事例では、既存建築物の図面がまったく残っていなかたため、最初に現状の間取りを調査し、平面巣に起こす必要があった。その際、併せて床下のシロアリ生息状況と根腐りの状況を大工とともに把握した。さらに検査業者を呼んで既存の構造躯体を検査した。

 これらの結果、床下は大引などの傷みが激しかったこともあり、床暖房導入のためにすべて撤去して再生することとし、保存状態のよかった既存の構造躯体はすべて残し、煙出し部分だけを新設することにした。ただし、構造柱にやく30oの傾きが見つかったため、ジャッキアップしてレベルを補正し、ターンバックルで傾きの補正を行っている。なお、現地調査の結果、地盤には岩が多いとか分かったため既存の基礎部分は良好と判断して、基礎の新設は増築部分のみとした。なお、これら解体工事は、すべて大工の手壊しとし、既存構造部分が傷まないようにした。

■地元産建材を使った土壁と瓦

 断熱材には羊毛を用いたウールブレス(アイティエヌジャパン)※1 100o厚を床、天井に充填し、増築部分の外壁には、竹小舞を組んで約80o厚を塗布した土壁とした。竹も小松産のものを使用した大壁とした(図2)。

これは、軒の出が現状のままだと雨仕舞を考えると外壁を真壁とするのは難しく、良質な新材を求めるのもコスト的に困難であるためである。なお、外壁、蟻壁および内壁には土佐漆喰を使用し、外壁にも用いた焼スギ板は既製品を使わず、スギをバーナーで焼き木目をきれいに出した。なお、板張り部分はささらこした目張りとして、、雨仕舞にも考慮している。屋根は地元産の赤瓦49版(赤茶色)を葺いた。銅線で留め、ルーフィングは杉皮を2重葺きとした(写真4)
。この瓦は1300℃で両面焼にしたもので、高度な陶磁器に近い性質を持つ。

■代金を手渡しにして信頼関係を保つ

 古民家改修の場合、コストを把握するのは難しく、特に木材の材料費や大工手間が大きく増減する。たとえば、既存躯体の木材が使えなくなった場合、撤去手間、新設手間、材料費がかかる。

 そのため、分離発注で行った今回の事例では、居間までの経験をふまえ、予備費を200万見込んだ。結果として、増減は211万となり、追加請求額は11 万であった。なお、請求書の提出に慣れていない業者からの請求は毎月20日締めで当事務所から各工事業者に連絡し、施主が直接業者に代金を手渡しするかたちをとった。こうして支払に信頼関係を確保するようにして、専門工事業者の支払に対する不安を軽減するように努めた。

■じっくり大工仕事をさせて高品質に

今回の事例では、大工が夏場に原因不明の虫刺されに遭って、治療費が発生してしまうなど、建築の施工現場には予期せぬ出来事が発生することも多い。また、施主の仕様変更などもあり、後期が1ヶ月延びててしまった。

 加えて古民家再生を分離発注とする場合、解体を始めてみなければ床下などの納まりや既存部分と申請部分の取合いが分からないので、現場を進めながら施工図を描いたり、材料の追加発注を行う業務も発生してします。

 以上の理由から、古民家再生の事例では施主に1年がかりで施工を行うと説明し、了承を得ているので、じっくり施工させている。そのため、大工に責任感を持たせることで建物そのものの出来をよくするためだ。当事務所では、25坪以下の場合大工1人で施工するほど。

 その分、大工手間が無駄なく現場に反映され、建物の質が向上すると信じている。さらに、職人の手間代を分離発注とし代金を施主から直接支払うことで、元請である職人の意識が高まり、同じ金額でも仕事の精度が高まることを実感している。

 最後に、今回の古民家再生を可能にしたのは、職人とのチームワークに加えて、分離発注とすることにより、施工中のコストを調整できたため、伝統工法の継承に適正な価格で取り組むことができたからではないかと思う。



column
オープンネットのCPD研修
文:山中省吾


 2003年末、オープンシステム(ピュアCM)を利用した事例の実績が、累計で1000事例を超えた。これらを詳細に比較・検討し、さらに合理的で確実に成果の挙がる分離発注型CMに進化するため、筆者のグループ(オープンシステム・ネットワーク会議)では、貴重な財産である事例を検討し、理論構築に向かおうとしている。
検討のなかで、分離発注型CMは、@経験、A業務フローと書式の整備(発注説明・見積要綱・見積比較・結果通知・契約関連など多岐にわたる)、B学習、の3要素が、費やす時間と成果を大きく左右することが分かってきた。

 1992年、筆者が初めて分離発注型CMを試みたとき、昼は工事現場に常駐し、夜は書類の整備に没頭した。2棟目は先の経験が生き、業務の流れは大雑把つかめたが、正確かつ迅速に処理する業務フローと書式は未整備で、費やす時間は依然として膨大なものだった。以降、整備と改良をを繰り返し、ひととおりのものが確立できたのは5年後だった。だが原稿行っているものよりも不完全だった。

 そして’98年、同じ志をもつ設計事務所が集まり、3要素を充実させる環境づくりに取りかかった。筆者の事務所が行っている業務フローと、取れに伴うすべての書式を公開した。分離発注初心者にとって、経験者の業務を疑似体験できるという利点がある。他の事務所はそれを参考に改善点を見つけ、それを筆者の事務所が取り入れた。こうしてオープンシステムは、進化を繰り返してきた。

  筆者が5年で身に付けたことを、筆者の事務所の所員も今では1〜2年で身に付けることができる。それは全述の3要素が整ってきたからだ。しかも、筆者が設計事務所のネットワークづくりに没頭している間に所員はほかの事務所の事例を吸収し、驚くべき成長を遂げていた。

 書類作成などの事務作業を、専用のソフトで行い、作成した書類の内容が以後必要なすべての書類に反映されるシステムを整備している。業者情報(会社名・住所・電話・担当者・振込先)などもデータベースから自動的に書類に転記される。しかし未だに多くの改善点が存在するにも事実だ。

■広く業務内容を公開し向上を図る

 今、多くの設計事務所が分離発注型CMに関心を持ち、業務として取組むところも増えてきた。筆者のグループは1000棟の実績を背景に、なかでも工夫を凝らしたいくつかの事例を通して、書式・業務プロセスなどの詳細を発表し、3要素の充実を図ろうとしている。

 それが、各地で展開している『オープンネットCPD研修会』であり、(社)日本建築士会連合会のCPDプログラム認定も取得した。このCPD研修会は、自らも学び他者もともに学ぶ目的で始まった。内的に抱え込むのではなく、広く公開することで設計事務所全体のスキルアップが図れると信じるからである。

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